古武術的、手提げの持ち方
古武術には、日々の動作も鍛練の道とする考えがある。
例えば、手提げ荷物。
持ち方ひとつで体の鍛練ができる。
普通の持ち方では、荷物を持つ手が内側に巻きけまれて、体と荷物が離れ、荷物が揺れて体を引っ張る観がある。
そこで、手首を軽く上に返して持つ。
親指と人差し指の股と、善椀の筋肉を結んだ線が地面に対し垂直になるよう意識する。
人差し指はほとんど使わず、浮かせるぐらい。
すると、荷物が体に添うようになり、体幹部で荷物の重みを受けとめることができ、下腹に重心が落ちる。
慣れないうちは手首が緊張して疲れるが、荷物の重みによる付加は体全体にかかるので歩きやすいうえに、単なる消耗でなく、体の養成につながる。
ちなみに、この手提げ荷物の持ち方の手首の形は刀を正眼に構える際の「切り手」という柄の握り方に通じる。
腕からの力をまっすぐ刀身に伝えられる持ち方である。
人は気の持ち方で体の感じ方もかわる。
荷物が重くて疲れるという不平も、気持ちを切り替え、時間を無駄なく使い鍛練していると考えることで、体を丈夫にもできる。
前に見たドキュメンタリー映画で、昔ながらの自然分娩に臨む妊婦さんたちに、医師が水を入れたバケツを持たせ歩かせているのをみたことがある。
床柱を研かせたり、薪割りもさせていた。
楽な現代の日常では、意識しなければ強い体はできにくいと、ドキュメンタリー映画で医師は主張していた。
※参・古武術で蘇るカラダ/監修 甲野善紀